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05:俊足の黒犬
〜もしもスナッフルが早めに到着していたら〜
うだるような暑さの中、ハリエットは両手に大荷物を抱えて、通りを歩いていた。昨年ハーマイオニーに買ってもらった服が汗でびっしょりしていた。
ハリエットは、ペチュニアの言いつけで、近所のスーパーに食料品を買いに行っていた。双子の兄ハリーは、この炎天下の中、庭の草むしりだ。今日はしこたまアイスも買い込んだので、こっそり一つハリーに渡そうと思っていた。冷蔵庫に入れるのはハリエットの役目なので、その時にお徳用のアイスが一本姿を消していたとしても、バレることはないのだ。
悲しいかな、ハリエットはこの十三年間で、こうした生活の知恵というか、ひもじさを耐え忍ぶ知恵というか、そういった類いのものを身につけるまでになっていた。
クレセント通りまでやってくると、ハリエットは一旦荷物を地面に置き、手を揉んだ。ビニール袋の紐が手に食い込んで、ひどく痛むのだ。丁度すぐ横は、寂れた公園だった。最近ダドリー軍団が暴虐の限りを尽くしているので、ベンチや滑り台が壊れかけのまま放置されていた。
あんまり遅くなってしまうとペチュニアに怒られてしまうので、ハリエットはまた自分を叱咤して荷物を持ち上げた。五人分の食料――ハリーとハリエットは二人合わせて一人分にも満たない量しか与えられないが、ダドリーが三人分くらい食べるので、結局合計大層な量になる――を買い込んだので、それはそれは重たい荷物だった。
マグノリア・クレセント通りまで来ると、曲がり角の所でばったりダドリーと遭遇した。ハリエットは嫌な予感がした。彼の後ろに、ダドリー一味がわんさかいたからだ。
「お前、こんな所で何してるんだよ」
「何って……見ての通り、買い物よ」
さっさと彼らの横を通り抜けようとしたが、ダドリーの胃袋はそう簡単に見逃してはくれなかった。
「何買ったんだ? お菓子とかないのか?」
「買ってないわ」
ハリエットは丸わかりな嘘をついた。ペチュニアに言いつけ通り、ダドリーのお菓子は山ほど買ったが、ここで彼に食い尽くされるわけにはいかないのだ。ペチュニアは、毎回レシートと食料品、お釣りをきちんと調べる。もしも相違があったとあれば、烈火の如く怒られるので、たとえダドリー相手だとしても、譲るわけにはいかない。
「嘘つけ! ちょっと貸せよ!」
だが、ダドリーの嗅覚は鋭かった。ハリエットの手からビニール袋をひったくり、すぐさまその中から目当てのものを見つけ出す。
「アイスじゃん! おいお前ら、皆で食べようぜ!」
通りのど真ん中で、ダドリーとその子分は、アイスに群がった。ハリエットは思わず荷物を取り返そうとした。
「止めて、ダドリー! 私が怒られるのよ!」
「うるさいな! これは俺のパパのお金で買ったものだ! お前がどうこう言える立場じゃないんだよ!」
箍が外れたダドリー達は、アイスだけでなく、他のお菓子まで手をつけていた。これでは、いよいよ本格的にペチュニアに激怒されてしまう。食事抜きもあり得るはなしだ。
「ねえ、ダドリー――」
「鬱陶しいんだよ!」
ピアーズが怒ってハリエットを突き飛ばした。ハリエットはそのまま尻餅をつき、石壁に頭をぶつけた。思わずその場に蹲る。
地の底から響くような、低く恐ろしい唸り声が、すぐ近くからした。ハリエットだけでなく、ダドリー達も怯えて固まる。
隣家の庭から飛び出してきたのは、熊のように大きい黒い犬だ。目をギラギラ光らせ、鋭い牙を見せて唸り、ゆっくりと近寄ってくる。
「狂犬だ!」
「噛みつかれるぞ! 逃げろ!」
これにはさすがのダドリー達も大慌てだった。年下の人間相手ならばその体格を活かし、余裕で制圧することは可能だが、これほどまでに大きい野良犬は対象外なのだろう。
まるで蜘蛛の子を散らすように、軍団は散り散りになった。ハリエットは腰を抜かしたまま犬を眺めた。
不思議と、恐怖はなかった。犬は、もう唸るのは止め、じっとハリエットを見つめ返した。可哀想なほど痩せ細った犬だった。黒い毛はゴワゴワと絡みつき、泥がこびりついている。大きな灰色の目に、ダドリー達が言うような狂気はないように見えた。
「助けてくれたの?」
ハリエットが声をかけると、黒い犬は、まるで怯えたように一歩下がった。人間にあまり良い思い出がないのだろうか。
「大丈夫よ。おいで」
右手を差しだしたが、犬はなかなかその場から動かない。こういうときのハリエットをなめてはいけない。辛抱強く待ち続けると、ようやく犬は一歩、二歩と踏み出した。そしてハリエットの手に鼻先を近づける。
「良い子ね。助けてくれてありがとう」
泥が固まり、すっかり固くなっている体毛を撫でた。犬は嬉しそうに吠えた。
「そうだ! 助けてくれたお礼に、何かあげるわ。ちょっと待ってて」
ハリエットはビニール袋をゴソゴソした。そして食パンを一枚と、イチゴ三個、リンゴ一個を地面に置いた。
「お肉もあるんだけど、生肉って食べられるのか分からないから……」
リンゴはおまけでもらったものだし、食パンやイチゴが少し減ったくらいでペチュニアは気づかないと踏んでの行動である。ハリエットはなかなか強かに成長していた。
黒い犬は、地面に並べられたご馳走を、目を光らせて食べた。リンゴの芯まで食べようとして喉を詰まらせているのを見て、ハリエットは笑ってしまった。
「あなた、野良犬? ちゃんとご飯は食べてる?」
まるで返事をするかのように黒犬は吠えた。ハリエットはわしゃわしゃと彼の頭を撫でた。
「ごめんね。もっとたくさん食べさせてあげたいんだけど、もう駄目なのよ。頑張って食べ物確保するのよ」
最後に黒犬の喉元をくすぐると、ハリエットは立ち上がった。辺りに散らばった荷物を拾い上げたが、アイスの箱はグシャグシャだし、おそらく転んだ拍子に卵も割れてしまった。ペチュニアに怒られること確実だと、ハリエットは深々とため息をついた。
そのまま歩き出したハリエットだが、とことこと先ほどの黒犬がついてくる気配があった。角を曲がっても、横断歩道を渡っても彼はついてくる。ハリエットは振り返った。
「あなたの家、こっちなの?」
黒犬は、返事をするかのように、ハリエットの足に顔をこすりつけた。ハリエットは困ったように肩をすくめる。
「あなた、やっぱり野良犬なのね。ホグワーツだったら飼ってあげられるかもしれないけど、ダーズリーの家じゃ絶対に怒られるから、駄目なのよ。私についてきても、何もしてあげられないわ」
優しく諭すようにハリエットが公園の方を指さしても、黒犬はそこから動こうとしなかった。ハリエットは困り切った。だが、これ以上時間を無駄にするわけにはいかなかった。アイスが溶けてしまう。ハリエットは足早にプリベット通り四番地を目指した。
ダーズリー家では、ヒーヒー言いながらハリーが草むしりをしているのが見えた。ハリエットはニコニコと彼に近づく。そして後ろから、彼の火照った頬にアイスをピタリとつけた。ハリーは小さく悲鳴を上げた。
「なっ――ハリエット?」
目を白黒させながら、ハリーはハリエットを見上げた。
「ダドリーの新手の嫌がらせかと思ったよ」
「もっと良いものよ。はい、どうぞ」
「アイス?」
ハリーはパッと笑みを浮かべたが、すぐに疑り深い顔になる。
「でも、おばさんにバレたら――」
「アイスが一個や二個消えたからって、おばさんは気づかないわ。溶ける前にどうぞ。熱中症になったら大変だもの!」
「ありがとう……」
ハリーは手を伸ばし、アイスを受け取った。だが、すぐにハリエットの後ろで、尻尾を振っている熊ほどに大きい犬に気づき、二度目の悲鳴を上げた。
「ハリエット! その犬どうしたの!?」
「この子? ダドリー達に絡まれてたのを助けて貰ったの。リンゴをあげたら、ここまでついてきちゃって」
「まさか、飼うなんて言わないよね?」
妹の動物好きは身に染みて知っているので、ハリーが釘を刺すように尋ねた。
「言わないわ。怒られるに決まってるもの」
ハリエットが黒犬を撫でると、彼は寂しそうにぺしゃんと耳を垂れ下げた。まるで人間の言葉が分かっているような仕草に、ハリーはニヤリとした。
「こんなに大きい犬なら、ダドリーの奴、腰を抜かして驚いただろうな」
「叫びながら走って行ったわ。ハリーにも見せてあげたかった」
アイスを食べ終えると、ハリーはぐっと伸びをした。
「後もう一踏ん張りしないと。全く、せめて夕方に言いつけてくれれば良かったのに」
「私も時間があったら手伝うわ」
「大丈夫。それまでにはたぶん終わるさ」
ハリーはため息交じりに草むしりを再開したが、横にぴょんと首を出した黒犬が、雑草を囓り、引き抜いた。そして、どうだと言わんばかりハリーを見上げた。
「えっ、この子、もしかして手伝ってくれるのかな?」
「なんて賢いのかしら。草むしりができるの?」
褒められたことで調子を良くしたのか、黒犬はどんどん雑草を抜いていく。その素早さは、ダドリーがお菓子に手を伸ばすくらいの速度に匹敵する。ハリーは歓声を上げた。
「この子すごいよ! 僕も飼いたくなってきた!」
「駄目よ。ダーズリーの家で飼われたら、むしろ不幸になっちゃう」
ダドリーのように可愛がられるなら幸せだろうが、扱いが自分たち双子のようになってしまったら悲惨だ。
「――ハリエット! 帰ったのかい!?」
家の中からペチュニアの声がした。ハリエットは慌てて返事をする。
「今行くわ!」
そしてハリーに向き直る。
「じゃあね、ハリー! ちゃんと水分とるのよ!」
「分かってる!」
パタパタとハリエットが家の中に入って行った後も、黒犬はハリーのために草むしりを手伝ってくれた。この調子だったら、夕方までには確実に終わるだろう。
「これは一体どういうことなの! 卵は割れてるし、アイスは中身が空っぽ!」
暑さのため、開け放たれた窓からペチュニアの声が漏れていた。
「途中でダドリー達が荷物を無理矢理奪ったの。アイスが食べたいからって――」
「言い訳なんかするんじゃないよ!」
家から響いてくるペチュニアの金切り声に、ハリーは眉を寄せた。黒犬も異変を感じ取ったのか、低く唸り始めた。
「いいかい、今日はもう食事抜きだからね! ハリーもだよ!」
「ハリーは関係ないわ!」
「連帯責任だよ! 大切な食料を無駄にしたんだから、それくらい当たり前だ!」
ハリーは苛立ち紛れに雑草を地面に投げつけた。こっそりハリエットに食べ物を分けようと思っていたのに、自分も食事抜きになったら、その計画は丸つぶれだ。とはいえ、なんだかんだ昔から片方が食事抜きになると、大抵もう片方も食事抜きになるので、あまり期待していなかったが。
「さあ、早く掃除をし! 塵一つ残ってたら許さないからね!」
「全く、嫌な奴」
ハリーが吐き捨てるように言うと、黒犬は同意するように唸った。彼はハリエットの方が気になるのか、ハリーから離れ、窓の近くをウロウロした。窓を掃除していたハリエットは、黒犬と目が合うと微笑み、手を振った。
ハリーはぶつくさ言いながら草むしりを続けた。食事抜きと容赦ない暑さに苛立ち、後ろから忍び寄ってくる気配にも気づかない。
気づいたときには、ハリーは花壇に頭から突っ込んでいた。後ろからあがる下品な笑い声に、ようやく事の次第を理解した。
「ダドリー!」
「だっせーの! お腹が空いたのなら土でも食べてろよ!」
ハリーの顔は土まみれで、おまけに眼鏡は蔓の部分が曲がっていた。『レパロ』ならすぐに壊せるのに、とハリーは愚痴り、またかけ直した。
今はもうダドリーの相手をするのも馬鹿らしい気分だった。だが、そんなハリーの代わりに怒ってくれたのは、黒犬だった。
どこからか聞こえてくるのは、恐ろしい唸り声。ダドリーは硬直した。ぎこちなく振り返ると、そこには毛を逆立てた巨大な犬が自分に向かって威嚇しているではないか!
「ママー!」
ダドリーは一目散に家の中に逃げ出した。ご丁寧に鍵までガチャリと閉める。
「ママ! ママッ! ハリーが庭に野良犬を引き込んでる! ハリーが僕に犬をけしかけたんだ!」
ハリーはハッとして、黒犬に向き直った。
「もう家に帰るんだ!」
そしてシッシと庭の外へ追い立てる。
「もうここに来ちゃ駄目だよ。怒れるバーノンが追いかけてくるからね」
黒犬はくうんと寂しそうな鳴き声を漏らしながらも、大人しく庭を出て行った。
「ダッドちゃんに何したの! ハリー!! こっちへ来なさい!」
ペチュニアのキーキー声を聞きながら、黒犬は一人寂しくダーズリー家を後にした。
*****
翌朝、ハリーとハリエットは惨めな気分で目を覚ました。お腹と背中がくっつくくらい空腹だったのだ。折角の誕生日だというのに、どんな目覚めだろうか。
「お誕生日おめでとう、ハリー」
「ハリエットも、誕生日おめでとう」
ロンやハーマイオニー達からのプレゼントは、昨夜すぐに開封してしまい、今日はもう楽しみなことは残っていない。一つあるとすれば、ようやくご飯にありつけることくらいか。
ハリーとハリエットは顔を見合わせて苦笑すると、着替えて階下へ降りていった。
居間では、ダーズリー家の三人はもうテーブルについて、新品のテレビを見ていた。ハリエット達がそうっとトーストに手を伸ばしても文句は言われなかった。というより、キッチンに入ってきたことさえ誰も気づいた様子がなかった。
テレビでは、連日報道されている脱獄囚、シリウス・ブラックについての警告を発していた。
汚いだの、人相が悪いだの、バーノンはぶつくさ言いながら、双子に恐るべき爆弾を投下した。なんと、今日から一週間、バーノンの妹マージがダーズリー家にお世話になるというのだ。彼女に良い思い出がなかった双子は揃って肩を落とした。だが、ホグズミードに行くための許可証にサインをもらうには、どうしても大人しくしていなければならない。
だが、マージの存在は、ただでさえ不快な夏休みを、一層不愉快にさせた。彼女はことあるごとに双子に嫌味を言ったり、杖で叩いたり、双子の身なり、両親を馬鹿にしたりするのだ。
隙あらば双子は居心地の悪い家から逃げだそうとしたが、マージはそれを許さず、双子の躾をああだこうだと口やかましく指図するため、四六時中自分の目の届くところに置きたがった。
昼食後、皆がダドリーのテレビゲームの観戦に夢中になっているとき、ようやく双子はダーズリー家から抜け出すことに成功した。外は暑かったが、ダーズリー家よりはよっぽど居心地が良かった。
行く宛もないので、二人は公園に向かった。ダドリー軍団が根城にしている場所なので、滅多に人が寄りつかない場所だ。肝心のダドリーは家にいるので、ここは安全地帯と言える。
ブランコに腰を下ろし、ハリーとハリエットはぼうっとしていた。マージ滞在中、『普通の人』らしくするため、二羽のふくろう――ヘドウィグとウィルビーは、ロンの所に行ってもらっているので、寂しくて仕方がなかった。彼らがいないと、魔法界と自分たちを繋ぐものは何もないんじゃないかと虚しくもなった。
特に会話することもなくブランコを漕ぎ、寂しい誕生日を過ごしていると、ワンッと元気な吠え声がした。揃って後ろを振り向くと、茂みに昨日の黒犬がいた。
「あ、昨日の……」
相変わらず黒犬はみすぼらしい見た目をしていた。しかしパタパタと尻尾を振る様子からは、嬉しそうな様子が伝わってくる。
黒犬は、また茂みに引っ込んだかと思うと、すぐに出てきた。今度は口に白い花を加えている。とことこと近寄ってきて、彼はそれをハリーとハリエットの間に置いた。
「くれるの?」
ハリーが尋ねると、黒犬はワンッとまた一鳴きする。花は丁度二輪あった。
「私達ね、今日誕生日なのよ」
花を拾い上げ、ハリエットはにっこり微笑んだ。ハリーも手の中でくるくる花を回した。
「友達以外で初めて誕生日プレゼントもらったよ。ありがとう」
わしゃわしゃと身体を撫でると、黒犬は嬉しそうに尻尾を振り回した。そんな仕草が可愛くて、ハリエットは一層なで回す。
だが、ゴワゴワした毛がどうしても気になった。ハリエットは急に思いついたように立ち上がった。
「そうだわ。お礼に身体を洗ってあげる」
ハリエットの言葉に、一瞬黒犬の身体が固まったような気がした。
「ほら、こっちにおいで」
公園の入り口には蛇口があった。ハリエットは水を出したが、黒犬は水か嫌いなのか、一歩も動こうとしなかった。
「ほら、ほら」
ハリーがせき立てると、渋々といった様子で黒犬は近寄ってきた。そして大人しく蛇口の下にお座りする。ハリエットはジャーッと水を出した。
黒犬は、身体を洗うことよりも、水を飲むことの方に夢中になっているようだった。必死に首をあげ、喉を鳴らしながら飲んでいる。
しばらくその光景を見守っていると、ようやく気が済んだのか、黒犬はぶるっと身体を震わせた。まるでシャワーのように、黒犬の頭から水が降り注いだ。
ハリエットが身体を洗おうと手を伸ばしたが、黒犬は嫌がって逃げようとする。ハリーが捕まえたが、何故だかハリーの手は嫌がらなかった。
「この子男の子だから、ハリエットに洗われるの嫌なんじゃない?」
ハリーがそう言うと、ハリエットは拗ねたように唇を尖らせた。
あらかた泥を洗い落とすと、黒犬はぶるっと身体を震わせ、水気を飛ばした。水滴が雨のように飛んできて、ハリエットは思わず笑った。
「冷たっ!」
「こら!」
ハリーに怒られると、黒犬はしゅんとした様子で耳をペタッとさせた。だが、まだくすぐったいのか、鼻は動かしたままだ。ハリエットは目を輝かせた。
「ねえ……この子の名前、スナッフルはどうかしら?」
「スナッフル?」
ハリーが聞き返す。
「ええ。だって、ほら、鼻をふんふんさせてる姿、とっても可愛いわ」
黒犬は未だ鼻をクンクン動かしていた。ハリーは笑みを深くする。
「良い名前だ」
「でしょ? あなたの名前はスナッフルよ」
頭を優しく撫でると、スナッフルは返事をするかのように大きく鳴いた。
*****
その後、暇を見つけてはスナッフルの所に通い詰めていた双子だが、丁度マージが帰る最後の日にハリーの堪忍袋の緒が切れ、彼女を膨らましてしまい、ダーズリー家を家出することになるのはまた違うお話。